サマセット・モーム 「昔も今も」 ~ マキアヴェッリ
サマセット・モーム の小説 「昔も今も (1946)」 を読んだ。 ( 清水光 訳 1955 発行 )
◇ 訳文の漢字や単語が難しくて少々読みにくいが、小説自体は大変面白い。 ルネサンス期イタリアの歴史を素材にして、チェーザレ・ボルジア と、ニコロ・マキアヴェッリ のやり取りが描かれている。 そして、両者は、それぞれに 「マキアヴェッリズム」 を体現している。
◇ チェーザレは、イタリアを統一すべく、冷徹な征服者・統治者として、思想を語る。 「謀反人を遇するには背信をもってすべきだ。 国家はキリスト教の教える徳性の発揚などでは、統治できるものではない。 国を治めるには慎重な思慮と大胆さ、決意と無慈悲さ、そういったものがいるのだ。」 「私の領土内を人々が安全に旅行できるようにしたいというのが私の念願なのだ。・・・・・イタリアの悩みの種となっていた小悪党どもを私が追いはらって、立派な手さばきで人民どもの生活を安らかに繁盛させているのを、あんた自身の目で御覧になることができるだろう。」
◇ マキアヴェッリは、チェーザレを客観的に観察・批評しながらも、自分自身は極めて個人的でスケベな欲望を追求する。 知人の夫婦が子供が欲しいにもかかわらず、ずっと子供ができないでいるのだが、一方で彼は、その嫁さんの美しさに夢中になってしまい、間男となる決心をする。 夫婦が信奉する、ある神父に金をつかませて、彼が言うには、「罪だとしても、ほんのささやかな罪ですよ。 そしてそこから大きな善が生まれるのです。 それによって立派な人物に幸福を送り、また信心深くてあなたの為にもなる二人の婦人(嫁とその母)に安心を与え、それにもう一つ大切なことは、あなたの属していられる教団にたっぷりと感謝の御寄進がくるのも当てにできるというのですからな。」
◇ 引用した部分だけだと、両者は、大変に尊大あるいは、ずる賢い人物のようにもみえる。 しかし読み進めるうちに、二人の思想が論理的に補強されていき、次第に、何だかそれなりに筋が通っているように思えてくる所が面白い。 要するに、二人の主張は、目的こそ違うものの、つまる所、結果オーライの思想なのだ。
◇ 小説の結末近くで、マキアヴェッリは、自分の体験をもとにした喜劇を書こう、ということを思いつく。 この劇というのは、実際に、マキアヴェッリが存命中に書いた喜劇 「マンドラーゴラ」 の事である。 自分の事を喜劇にする、つまり、自分や回りの人々を外から眺め、その悲喜こもごもを笑い飛ばす、ということに大きな喜びを見出すのである。 ( 実は、この小説自体が、一部、マンドラーゴラの筋書きを真似て書かれている。 )
◇ 著者のモームは、この小説を通して、マキアヴェッリズムというものを、あらためて客観的に見ようとしているように思える。 「ある目的の実現のためには、常識的な手段にこだわってはいけない」 という主張は、利己的な行為に結びつきやすい。 しかし、それでも現実の社会では、それが有益な場面も多いものである。 話の最後に、マキアヴェッリは、このようなことを言っている。 「善が悪を克服したとすれば、それもやはり善なるがゆえに克服し得たわけではない。 それがたっぷり金の入った財布を持っていたからなのだ。」
◇ 「昔も今も」という題名は、ルネサンスの昔も、モームの生きる今も、同じだなあというような意味らしい。 500年も前に合理的な現実主義を唱えた人物がいた、というのは興味深い。 一方、その思想が今だに意味を持って生き続けているというのは、やはり人間が大して変わっていない、ということだろうか。
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投稿: 誕生日 | 2020.06.05 21:16