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ズブロッカ ~ サマセット・モーム 「剃刀の刃」

サマセット・モーム の小説 「剃刀の刃」 にズブロッカ が登場する。 ヒロインの一人、イザベルが、恋敵の女を前にして 「ズブロウカ」 のことを、このように言っている。 (齋藤三夫 訳)

「刈り取ったばかりの乾草と、春の花の香りがしますわ、立麝香草とラヴェンダーのね。 そして、口ざわりがとっても柔らかで、すてきに飮み心地がいいんですの。 月の光の中で音樂を聞いているようですわ」 (立麝香草=タイム)

なかなか面白い表現だ。 (アルコール40%なので、口ざわりが柔らかいとはいえないかもしれないが。) 小説の中では、その後も2回ほど、ズブロウカが登場し、話の筋をつなぐ役割を果たしている。 結局、最後は、イザベルが本心を白状するのだが...

「あたし、あのお酒、とてもいやだと思ったんだけど、これまで味わったこともないほど實にすばらしいものだって、そらっとぼけたの。 もし機會を摑めば、あの女には決して我慢できる力がないだろうってことははっきりしてましたわ。 ・・・ 」

要するに、相手の女が酒に溺れているのを見こして、ズブロウカを餌にして陥れる策を案じていたのだった。 まあ痴話といえばそれまでだが、実は、このようなエピソードは、小説の主題そのものではない。 「剃刀の刃」 の中身については、「羊男さんの解説」 が実に当を得ていると思うので、そちらを参考にして頂きたい。

ところで、作者のモーム自身だが、著作中で「ズブロウカ」 を扱ったのは、やはりこの酒が好きだったからだろうか?

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